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INTERVIEW

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ファイブワン・ファクトリー株式会社

基本的なデザインはシンプルで、パターンにルールがあるからこそ、細部へのこだわりで差が出るメンズスーツ。ドレステリアのスーツは、毛芯仕立てといせ込み(※注(1))による存在感のある胸~肩周りが特徴で、仕立ての美しさが好評を得ています。

肩と胸周りのボリュームに対してウエストを絞り、男性の体型にメリハリをつけて見せるドラマティックなフォルムや、既製服でありながら着る人の身体にフィットする絶妙な着心地が特徴です。
ドレステリアのデザイナーとパタンナーがこだわりを持ってイメージするそんなスーツを仕立てられる工場は、非常に数少なく、「ここにしか託せない」というファクトリーにお願いしています。
今回は、そのファイブワン・ファクトリーの工場長にお話を伺いました。

<注釈>
※(1)平面的な布に丸みをつけて立体的にする技法。ジャケットの袖付けなどに使用される。腕や肩の可動がよくなるが、高度なアイロン技術と縫製技術が要求される。

一手一手の丁寧な作業で、平面の生地を立体に近づけていくんです

「服を立体的に仕立てることは非常に難しいんですよ。 パターンはもちろん平面ですし、裁断した生地も平面。さらに言えばアイロンも台も平面です。
それに対して人体は立体ですよね。服を身体になじむような立体に仕上げるために、アイロンを当て、じっくり時間をかけて生地をゆがめ、くせ(※注(2))を取ったり、いせ込みを入れたり…、そういう一手一手で服を立体に近づけていくんです」

<注釈>
※(2)立体的な身体になじむように、アイロンワークによって平面の生地を湾曲させる縫製前の下処理。縫製途中でもアイロンワークの度に、くせとりを行っている。

工場長の口ぶりには、ファイブワン・ファクトリーの技術力への誇りがにじみます。特に、自信を持って話してくれたのは、オペレーターたちの意識が高いこと。

「うちのオペレーターたちはみんな、“服が立体になる感覚”を持っていますね。最終形の立体を思い浮かべながら、各オペレーターが一手一手の作業をしているんです。ファイブワン製とはなんなのか、何をどう作るべきなのかと考えていて、ひとりひとりのオペレーションを、より意味のある作業にしようという意識が高いと思います。
そういうオペレーターを育てるために、新人教育のときには、ミシンの地縫い(※注(3))をさせつつ、完成した製品を見せるんです。『あなたがミシンで縫ったこの場所が、服のこの部分になるから、こういう縫い方をしないといけないんですよ』って。全然違うと思いませんか? ただ『上から下まで縫って』って言うのと、『あなたの縫う線1本にちゃんと意味があって、立体になって、お客様の心に響くんだよ』と言うのでは」

<注釈>
※(3)2枚の布をしっかり縫い合わせること。

オペレーターには 「自分でしっかり考えて」と言っています

話を聞く中で、キーワードとして出てきたのは、“考えるオペレーター”という言葉でした。
「私が入社して1年目の当時は『オペレーターに考えさせるな』って言われたんです。『オペレーターは、言われたことだけやらせればいい』って。でも、私はその考え方に反発して、すごく怒られた思い出があります。入社1年目の若造が生意気なことを言ったとは思うのですが、私はその言葉を聞いたときにすごく悲しくなりました。
職人の世界では、『お前は言われたことだけやっとけ!』というのが当たり前だったんですよ。昭和の雰囲気で、かつてはよかったのかもしれませんが、今、そんな言葉を若い子らにかけるのは、私は違うと思っています。ですから、私はオペレーターに『しっかり考えて』と言っています。
オペレーターが自分たちでちゃんと考えるからこそ、各工程で“これはいい”、“これはダメ”、“ダメだったら止めて直す”ということを、それぞれちゃんとジャッジできるんです」

そんなオペレーターたちの高い技術と服への愛情で仕上がる、ドレステリアのスーツ。ただ、ディテールにこだわりの詰まったドレステリアのスーツは、仕立ても一筋縄ではいかず、製作側の苦労は絶えないようです。それでも、ファイブワン・ファクトリーはドレステリアのものづくりの姿勢に共感してくれています。

「ドレステリアは手仕事のつまったものづくりを継続的にされていますよね。ベンツ(※注(4))のくせ取りも他に先駆けていましたし、いわゆる“雨降り(※注(5))”と言われる袖のいせ量にもこだわっていますし。かつてやっていたラペルのハンドステッチは大変でした。ラペルをローリングさせながら、キワのキワに打つんですが、数限られたオペレーターしかできず、一日に5着くらいしかできないんです。
私達はデザイナーさんとパタンナーさんが、どういう思いでデザインやパターンを作られたかっていうのを感じるんですよ。工場なのでいろんなパターンを見ますけど、やっぱりドレステリアのパターンを見ると、『これは、いい服ができるな』と感じますね。デザイン性があって、そこに私達のようなクラシックなものづくりが融合する形で、唯一無二の洋服ができあがっているんじゃないかと思います。
また、表からは見えない副資材(※注(6))へのドレステリアのこだわりも感じます。芯地は最高の技術を持つ芯地メーカーのものを使用しているので、私達は縫製でフォルムが出しやすいし、何と言っても服が長持ちしますよね。クリーニングを多用したとしても10年は持つのではないでしょうか。 ドレステリアは、ものづくりを大事にされているイメージが強いんです。メーカーさんにとっては、私達工場は下請けなので、上から来られることも多いんですけど、ドレステリアは工場に対して尊敬を持ってくださっている感じがします。フィフティ・フィフティの関係が、仕上がる服にも反映されますよね」

<注釈>
※(4)ジャケットの後ろの裾の切れ込み部分。
※(5)いせ込みにより袖周りにゆとりを持たせているので、袖山に雨のような縦のドレープができる。イタリア・ナポリでよく使われる仕立て技法。
※(6)裏地、芯地など。

ドレステリアも私達も、目の前に楽な道があってもそちらに行かないタイプ(笑)

ドレステリアは今年20周年を迎えますが、ファイブワン・ファクトリーも10周年だそう。最後に今後の展望を語ってもらいました。
「ドレステリアの世界観がより多くの人に伝わっていけば、それが我々にとっても喜びです。お店に行ったときにワクワクして触りたくなるような洋服を発表してもらいたいなと思っています。今の時代、売れるものを予測することは難しいと思うんですけど、ドレステリアとファイブワンで手に手を取って力を出し切れたら、お客様にも伝わるんじゃないかと思うんですよね。ドレステリアも私達も、目の前に楽な道があってもそちらに行かないタイプなんじゃないかと思うんですよ(笑)。もう少し年を取ったときに、こういうのを“生き様”って言われたらカッコいいんじゃないかと思いながら、私達はやります。無理難題のほうが燃えるので(笑)」

Writer:Asuka Chida

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