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22.07.12

みんなの台所

実験を重ねて生まれた
燻製チーズケーキ

〝ちょっかん〟という愛称で親しまれている和田直幹さんが燻製に興味を持ち始めたのは、東日本大震災がきっかけだった。「震災を経験して、身の危険を感じました。いつ何が起こるかわからない。自分の身は自分で守らないといけない。そう考えているうちに、食材の長期保存を可能にする薫製に興味がわきました」

ちょうど時を同じくして、自宅にスモーカーを持つ友人から、燻製に挑戦してみないかと声をかけられた。「まずは一般的なベーコンから作り始めました。どうすれば食材が長持ちするのか、ネットで得た情報や知人の意見を参考に、試行錯誤。燃やす木材の種類もさまざまあるので、においと味の組み合わせもおもしろくて、1か月に3〜4回は実験を繰り返しました」

燻製を〝実験〟というちょっかんさん。その根底には「失敗することがおもしろい」という考えがある。「燻製はしょっぱい系が主流なので、甘いものをスモークしてみたらどうなるんだろう、という単純な動機から、チョコを燻製してみました」。いぶし銀とかけて〝SMOKE〟とシルバーでプリントした密閉パッケージに入れ、友人知人に配ったちょっかんさんの燻製ホワイトチョコは、みんなが驚くアイデアだった。

「日本人は失敗することを極端に恐れるけど、逆の発想にすると、進展の余地があるということだと思うんです。失敗したらまた他のアイデアを探ればいいだけ。それに失敗することに慣れると、どんどん気持ちも楽になるんです。甘味を燻製してみたのは、当時誰もやっていなかったから。みんながやっているところで勝負しても勝てないけど、誰もやっていないところを見つければ勝負しなくてすみますから。その考えは、ぼくのものづくりのベースにもなっています」


「箸の先っぽだけスモークしておけば、燻製していない食材でも燻製になるかも」「食材に限らず、たとえば服でも、レザーをスモークすることができる」など、取材中もどんどんと新しいアイデアを口にするちょっかんさん。驚くことに、シナモンで燻製した、燻製についてのZINE『ZiNEせい LiFE AT AMOKE』を制作したこともあるのだという。

まだ世の中にないもの、買えないものを作っていきたい、というちょっかんさん。彼の実験は、まだまだ続いていきそうだ。


燻製クリームチーズケーキ

◎材料(4〜5人分)

薫製したクリームチーズ 250g
砂糖 75g
たまご 2個
薄力粉 大さじ1
生クリーム 200ml

◎作り方

1.クリームチーズを花椒、桜、シナモンで2〜30分燻製しながら溶かす

2.泡立て器でなめらかになるまで混ぜる
3.ケーキ用の型にクッキングシートを水で濡らして敷く

4.2に砂糖とたまご、薄力粉、生クリームを加えて混ぜ、型に流し込み、170度のオーブンで40分焼けば完成

炙った燻製ベーコンと一緒に食べても絶品。

いつも食べているチーズケーキとはまたひと味違ったデザートに。
家庭でも簡単に出来る燻製アイテムを使って、是非作ってみてはいかがだろうか。

Photo:太田太朗
Interview / text:松本昇子

和田直幹(わだ なおき)さん

ビンテージ品の販売や友人たちとポップアップなどを行う〈GEEK OUT STORE〉運営。シルクスクリーンのプリントユニット〈SQUEEGEE〉主宰。〈C.P. COMPANY〉50周年記念ブック『C.P. Company 971 - 021. An informal history of Italian sportswear』参加。本業は会社員。人生のバイブルは小沢健二著『うさぎ』。

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